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2024

24BLOG HC 荻原

『この子たちはやればできる。けど、やってない』


約5年前、初めて明学に来た時に感じたことだ。



・努力はカッコ悪くて恥ずかしい

・チャレンジする人をイジって笑いに変える


という明学の文化には心底衝撃を受けた。


皆口を揃えて「自信がない」というので、これらの深層心理は、「他人のチャレンジを笑い物にすることで、臆病な(失敗が怖くてチャレンジできない)自分を正当化する」ということであろう。


無自覚な心のブレーキが能力の発揮を阻害している状況だった(もちろん全員ではないが、感覚的に8〜9割くらいの学生が)。


マインドセット(考え方、思考パターン)が明らかに歪んでいた。



問題の根本はここだとすぐに分かった。



「やればできる」という成長マインドセットの学生が多数派にならなければ、このチームが本当の意味で生まれ変わることはない。


マインドセットはいわばチームのエンジンだ。エンジンの性能が低ければどんなに良いパーツ(スキル、戦術等)を取り付けたところで伸び代はたかが知れてる。

良いパーツの取り付けだけでは不十分で、同時並行でエンジンを磨いていかなければいけない。




だが、現実は甘くなかった。


多くの明学生のマインドセットを変える試みは困難を極めた。


何度言っても伝わらない。何度言ってもすぐダラけた練習(雰囲気)になる。何度言っても筋トレしてくれない。ちょっと強めに指摘すると機嫌を損ねて拗ねてしまう。


とにかく孤独だった。正直、何度心が折れそうになったか分からない。指導者としての力不足を痛感することも多く、明学を強くするのは無理なのかもしれないと頭をよぎることも多々あった。


タイト、トモヤ、ルイトの代の皆んなにはこんな未熟な指導者で本当に申し訳なかったと思っている。特にルイトの代の2部降格は120%俺のせいだった。


とはいえ、最初の3年間は、もがき苦しむ中で指導者として大きく成長させていただいたと感じている。


上手くいかない時は、優秀な指導者だったらどうするか、ということを常に意識してやってきた。沢山本も読んだし、YouTubeで色々な人の話を聞いてきた。「最近の若者は〜」と学生のせいにしてはいけない。伝わらないのは自分の伝え方に原因がある。チームが上手くいってない時こそ、まず指導者である自分が変わらなければいけない。


色々学びながら、明学生のポテンシャルを信じて、ひたすら仮説検証を繰り返した。



「本質を見誤らず、諦めずに粘り強く頑張れば、大抵の物事は正しい方向に進んでいく」


「強い情熱、強い思い、強い愛情を注ぎ続ければ、必ず明学生にも伝わる日が来る」


そう強く信じてやってきた。






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『我が子のように、愛情を持って接する』


指導者としての俺の根底にはこれがあるような気がする。


近年、叱ることができない大人が増えている、というが、俺はそんな大人が嫌いだ。

人の上に立つ人間が叱るべき時に叱らないのは、ただの怠慢であり、他人の人生などどうなっても自分には関係ないという自己中心的な考えから来ているはずだ。


その子の人生のためにもダメなことはダメと言う。

絶対に嘘はつかずに、真正面から向き合う。

努力が実ったら、頑張って努力できたということを褒めて共に喜ぶ。

道を踏み外しそうにしてたら手を差し伸べて正しい方向に導いてあげる。

小手先の指導ではなく、長期的な人生までをも考えて指導してあげる。


指導者として人の上に立つと決めたからには、指導者として確固たる自信を持てるまで、ひたすら学んで考え抜く。学生に嫌われることを恐れず、指導者として信念を貫く。

そして、深い愛情を注ぎながら学生達を正しい方向に導き、部活動というかけがえのない経験から多くの事を学んでもらいたい。


そう心から願い、学生と向き合うことが指導者(大人)の責任であり、カッコいい指導者(大人)の在るべき姿であろう、と俺は思う。





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『チーム力の上限は、指導者(リーダー)の力量』


チーム力が、指導者の能力(熱量、知識、経験など)を上回ることは基本的にはない、というのが俺の持論。


これは会社などどんな組織でも大体は当てはまると思う。リーダーが能力不足だとチームは絶対に間違った方向に進んでいく。


チームが日本一を目指すのであれば、俺は日本一の指導者にならなければいけない。

色々と学び続けなければいけないし、手を抜いてる姿を絶対に学生に見せてはいけない(学生は大人のことをよく見てるものだ)。私は指導者1年目(2017年の早稲田)の時から本気でそう思ってやってきた。


指導者になってからの約8年間、土日の練習やミーティングはほぼ全出席(流石に数回は休んでる気もするが本当に休んだ記憶がない)。

2017〜2019の早稲田Aオフェンスコーチ時代は、年一度の1週間休みを合宿や海外遠征に使ったりもした。


家族持ちでここまでやってるラクロス指導者は少ないとは思うが、「指導者は学生のことをリスペクトして、やると決めたら全力でやるべき」という価値観の俺にとっては至極当然なことだ。


いい大人のくせに、何かと理由をつけてあまりグランドに来ない(勉強もしない)指導者を今まで何人も見てきた。そういう人は決まって、「学生主体でやらせてる。教え過ぎない、考えさせる」といってサボってる自分を正当化する。学生とはヘラヘラした雑談が多く、学生に好かれるようにご機嫌取り(なので学生からの人気はあったりする。本当にタチが悪い)。

学生は大人のことを見ながら空気を読んで行動するものなので、そういった指導者の生ぬるい姿勢は確実にチーム全体に伝染していく。


俺はこういう指導者のことが本当に苦手である。

手を抜いたら学生に失礼だし、大人として無責任。

学生達にとっては一生に一度の貴重な大学生活。それを何だと思っているのか。

指導者をやると決めたからには、教え子達には最高の環境で最高の経験をさせてあげたい。大人である指導者が若者の可能性を潰すことなど絶対にしてはいけない。


もちろん、指導者も人間なので、完璧な指導者などこの世に存在しない。こんな偉そうに持論を語っている俺も、まだまだ未熟者であるのは重々承知だ。

ただ、上述のような強い思い、強い愛情、強い信念を持ちながら、最大限努力して自分なりのベストを尽くすのが真のリーダーなのではないだろうか。






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ラクロス歴、約20年。

新人戦でMVP、飛び級でU21、フル代表(2010年世界大会出場)、海外遠征は計7、8回、関東ファイナル4は今年で7回目、などなど。

一見華々しい経歴に見えるかもしれないが、不器用な俺は、その裏で数え切れないほどの苦難を経験してきた。

原点である大学受験の浪人生活は本当に辛く(現役時代に全く勉強してなかったので自業自得だが)、ストレスで部屋の壁を殴る蹴るで穴だらけにして家族に受験を止められたりしながらも、気合いと根性で第一志望(早稲田スポ科)に合格。

ユース、U21では、最低の指導者にイジメのような扱いをされ、プライドをズタボロにされた。

4年の時のファイナル4は慶應に完敗して、あっさりと学生ラクロス引退。

2010年の世界大会(フル代表)も「なんで荻原が選ばれるんだ?」という外野からの低評価がめちゃくちゃ悔しくて、「結果出して見返してやる」と(MFの序列で最下層だったが)7試合で5得点取ってやった。


このような苦難と向き合って乗り越えてきた多くの経験、そこから実際に感じて学んだこと、それら全てを学生に伝えたいと思ってるし、伝えているつもり。物事を抽象化することが割と得意なので、俺の考え方や言動は、俺の全ての経験の結晶のようなものだ。


⚫︎勝負の神様は細部に宿る

⚫︎部活動は今しかできない最高の遊び

⚫︎「やればできる」という自信をつけて人生変えよう

⚫︎失敗は発見(沢山失敗した人が大きく成長する)

⚫︎緊張を力に変える方法(メンタルはスキル)

⚫︎勝って兜の緒を締めよ

⚫︎魔法の言葉「全てはうまくいっている」


などなど


いつものこういった話は、皆んなの足りてない部分を補うように、色々な意図をもって話している。ほとんどの話が、ラクロスだけでなく、仕事や私生活にも転用できるものなので、今後の人生のどこかで役立ててくれたら本望だ。



俺は、ラクロスと出会って本当に人生が変わった。

教え子にも、ラクロスを通して人生を変えてもらいたい。

心からそう思っている。






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スポーツの指導者は、本当に素晴らしい仕事だ。


指導者が自身の経験から学んできたことを学生に伝える中で、学生は技術的にも人間的にも成長していく。

指導者は、学生の成長していく姿から大きな勇気と感動をもらうと同時に、様々なことを教えてもらう。

指導者が一生懸命頑張れば、指導者と学生は共に感動し、共に成長する、という極めて美しいWin-Winの関係である。


さらに、スポーツから生まれる喜びや感動は、指導者、学生間だけに留まらず、観客、学校関係者、OBOG、関係者の家族、その他多くの競技者などに伝播していく。


このやりがいは言葉では言い表せないものがある。






学生時代から今に至るまで、ラクロスで関わってくださった全ての方々には心の底から感謝している。感謝してもしきれない。

妻も、会社もラクロス繋がり、今も付き合いのある友人はラクロス関係者ばかり。今の俺の生活はラクロス抜きでは語れない。ラクロスというスポーツが、俺の人生を豊かで色鮮やかなものにしてくれた。






「世の為人の為に、自分の才能を出し尽くす」


俺は、自分の人生のミッション(使命)をこう掲げている。


ラクロスの指導者を続ける限りは、全ラクロス関係者への感謝の気持ちを忘れず、多くの方々の思いも背負いながら、母校やラクロス界への恩返しの意味も込めて、持てる力の全てを出し尽くしていきたいと思う。





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さあ、明日は関東ファイナル。


ついにここまで来た。

この5年間も、今シーズンも、ひたすら目の前の課題と向き合って突っ走ってきたらいつの間にか強くなっていた、そんなちょっと不思議な感覚だ。


俺が明学に来て、初めてちゃんと新人育成した代が今年の4年生なので、順調と言えば順調だが、出来過ぎと言えば出来過ぎだ。


皆んなが1年の時に、「この代で学生日本一を狙うぞ」と何度か言ったのも、マインドセットを変えるためという意味合いが大きかったので、「まさか本当にここまで来るとは…明学生マジで凄いな」というのが本音だ。


「この子たちはやればできる」と最初から思ってはいたが、お世辞抜きで皆んなのポテンシャルは想定以上だった。

お前らマジで凄いから。選手も、スタッフも、皆んな明らかに自信ある顔つきに変わって来てる。もう人生変わってるね、最高だよ。






明日もいつも通り『攻める』よ。


ロースコアゲームなんてクソ食らえ。

消極的なマインドでセコい勝ち方するくらいなら撃ち合って砕け散った方が100倍マシだ。

攻撃は最大の防御なり。

失点なんてどうでもいいから10点以上取るぞ。


やってて面白いラクロスというのは、観てて面白いラクロス。

やってて面白い、観てて面白いラクロスを追求すれば、積極的な(攻めの)マインドになって必ず成長していくし、結果も付いてくるはずだ。


究極的には、勝つか負けるかじゃないんだよ、やるかやらないかなんだ。




涙を飲んで散っていった他大のラクロッサーたちの思いを背負って、


謙虚に、貪欲に、楽しもう。


そして、明学の名をラクロス界に轟かそう。




やればできる。





やるよ。





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明治学院大学体育会男子ラクロス部

ヘッドコーチ 荻原 史暁


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